在宅医療部

コロナの在宅療養支援における連携体制

2021/08/19 は「ファストドクター」代表の菊池亮先生をお招きして、コロナの在宅療養支援における連携体制について話し合う機会を頂いた。
ファストドクターさんは、元々夜間や土日の往診を専門としたクリニックで、夜に子供が熱を出したとか、急な病気に対して電話一本で医師が自宅に駆けつけるというサービスを展開されている。今回のコロナ禍でも、発熱者に往診し自宅でのPCR検査を行い、保健所と連携しつつ、必要に応じて自宅療養のサポートや入院トリアージなどを行っておられる。大阪が医療崩壊した時にも入院できないコロナの呼吸不全に対して在宅酸素装置を持って駆けつけ、多くの患者さんたちを救ってこられた。
今回東京都との契約で、コロナの在宅療養支援を東京都・東京都医師会・地区医師会・ファストドクターが連携することにより、自宅療養者が適切に電話・オンライン診療・往診が受けられる仕組みが構築されている。
それぞれの地区医師会でも、コロナの自宅療養支援に取り組んでいるが、その実際は様々で、経験のないコロナ、しかもその多くが呼吸不全のある重症者への往診を引き受けて頂けるところはそうそう無いのが現状。そこで危機感を感じた東京都や都医師会が、すでに実践されているファストドクターと契約し、広域のコロナ往診体制を確保している。
ただ、そもそもファストドクターの営業は夜間や土日に限られる。このコロナ対応もその範囲内でなさっておられるため、日中の対応が手薄になり、保健所も救急隊に頼るしか無かった。これまでは自宅療養で悪化したら、即搬送入院ができていたが、いまはそうはいかない。
当地域の玉川医師会では、保健所やフォローアップセンターからの往診要請に対応すべく、5月の第4波が始まったときから、当院とふくろうクリニック、GPクリニックの3つの在宅診療所で「玉川コロナ往診チーム」を結成、当番制で日中週7日間の出動体制を敷いている。それでも5-7月の3ヶ月間でコロナ往診の出動したのはわずか3回だけだったが、8月に入り、長引く感染爆発でいよいよコロナ病床が一杯になり、行き場のない重症者への対応が洪水のように一気に押し寄せてきた。
日中にこれだけSOSを求める方がいるのだから、夜間はもっとあるのかもしれない。夜間担当のファストドクターは世田谷にも往診してくださっているようで、実際日中駆けつけると、数日前にファストドクターの夜間往診を受けたという方も数名おられた。同じ地域を日中と夜間で分担しているのなら、その両者がちゃんと連携することで、この地域のコロナ往診チームが一体化し、相互にサポートし合えるようになるのではないかと考え、さっそく代表の菊池先生にお声かけしたところ、二つ返事で「すぐに伺います!」と相成った。
なによりコロナ往診についてまだまだ新米の僕らは、ファストドクターのこれまでの経験に学びたいと考えていた。菊池先生はコロナ往診の統括的な役割をなさっていて、自宅で診るコロナの実際やその後のフォローのタイミングなど詳しく教えてくださった。ファストドクターのコールセンターには総勢100名を越える看護師が24時間体制で詰めていて、軽症者には1日3回、中等度の方には1日8回もの状態確認の連絡をなさっているという。その緻密さは、火が付くと足の速いコロナの病勢をキャッチするための、経験に裏付けられた貴重なノウハウだろう。
ただ、さすがにこれだけ出動やフォローが増えていくと、さすがにマンパワー的に限界もあるだろう。一方で地域に根ざした我々の在宅チームは、このエリアで保健所やコロナに対応して頂ける訪問看護との密な連携もできている。ファストドクターの往診以降をこちらで引き継ぎ、訪看と一緒になって身近なチームでフォローしていくという体制作りは、お互いにメリットが大きい。またこの会議にはZoomで保健所にもご参加頂き、相互の連携体制についてご賛同頂くことができた。この災害時、いまは地域の内外を問わず、ワンチームとして総力で臨まねばならない。新米チームに強力な助っ人を得たように感じた。

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