在宅医療部

日本在宅医学会で「回復の見込みのある患者が治療を拒否した症例から往診同行看護師の役割を考える」 という演題でポスター発表を行いました

こんにちは、桜新町アーバンクリニック看護師の小澤です。

本人が治療や処置行為を納得し同意を得るためのインフォームド・コンセントは重要とされるなか、
患者・家族と医療者が互いに理解し合えていない状況では合意不足となり得ます。
私達看護師は患者さんの立場にたった意思決定支援や、医療者に対する不満を聞き入れ中立的な立場で
代弁することが要求されることを往診同行業務の中から学びました。
今回は、回復見込みがあるにも関わらず患者さん本人の強い拒否によって治療に難渋した症例を発表
しました。

【症例】

88歳男性、気管支喘息重責発作にて往診の依頼があり緊急訪問。本人の死生観を記した複数の
貼紙が部屋中にある。

【経過】

訪問1回目:本人は会話ができない程の呼吸不全と高熱による不穏状態。娘さんは入院加療を希望したが、「病院へは絶対行かない。」という本人の意思を伺い、やむなく軽く鎮静をかけつつ、抗生剤やステロイドの注射を行った。

訪問2回目:呼吸不全症状は緩和されたが、険しい表情と厳しい命令口調で本人の死生観や治療への抵抗感を述べ治療を拒否。同行看護師は共感的姿勢で意向を聞き傾聴した。

訪問3回目:医療者や治療を受容する様子が見受けられ、娘さんと医師は患者を説得しようとアプローチ
するが、看護師は中立的な態度で本人の意向にそった食事の提案等を実施。

訪問4回目:笑顔がみられ本人から看護師へ身体状況を話すようになり、自ら服薬行動をとるなどのラポール形成ができた。

【考察】

当初娘さんはお父さん(患者さん)の意思主張に対し否定的であったが看護師との会話から
お父さんの気持ちを尊重することができるようになった結果、本人の意思を尊重した治療が可能となった。

往診同行看護師の役割として①診療の補助②地域連携③患者家族教育が挙げられます。
治療も重要だがそれぞれの立場を理解している看護師として医師と患者さん家族との調整役としての
往診同行看護師の役割を再認識した事例でした。

今後も往診同行看護師として経験した事例を定期的に書こうと思います。
引き続き、宜しくお願いします。

在宅医学会小澤