アーバン日誌
コミュニティ・ホスピタル構想
僕らが2000年に世田谷で開業して以来、ずっと変わらずに追求しているのは「家庭医療・プライマリケア」というスタンス。在宅医療はその延長に過ぎない。地域でその方らしく暮らしていくという当たり前が、病気や老化、認知症などで難しくなっていく。それをささえる医療者には医療モデルから生活モデルへの転換が必要となる。
その意識は、在宅医はもちろん、地域でかかりつけとして診ている診療所医師にも広がってきているが、まだまだ病院(入院)は従来のままであることが多いため、病院と診療所間の連携においてストレスを感じることも少なくない。無論在宅医療だけで完結する医療ではないので、レスパイトも含めた入院やリハビリなどで補完し合える病院の存在は、自宅療養を継続するためにも必要な存在である。東京にも中小の病院がそのように生まれ変わり、在宅療養をバックアップするという役割を明確に示し、実践されている病院も少しずつ増えてきている。
昨日、愛知の豊田地域医療センターの大杉泰弘先生が当院にご来訪された。大杉先生とは10年くらい前に当院に見学に来られて以来のお付き合いだが、同センターはまさに地域をささえる「コミュニティ・ホスピタル」構想を打ち出し、その核となる総合診療医を育成する教育プログラムを整えて、全国から志望する若き医師たちを集めている。入院、リハビリ、在宅医療の機能を備え、地域の家庭医や在宅医とシームレスに連携しながら、地域に求められる病院機能を提供していく。こうした医療機関が全国に広がれば、良質な総合診療医(在宅医や家庭医に欠かせない診療スキル)が増えるし、在宅医の負担軽減にもつながるだろう。
そんなコミュニティ・ホスピタルを全国に100カ所つくるという野望を語られた大杉先生。僕らもタッグを組んでそれを東京で展開していくことを計画している。キモになるのは、やはり総合診療医も含めた地域医療を担う多職種の人材育成と旧来型の病院を変革していく運営力。いずれもハードルが高いことが想像されるが、実現できれば日本の医療を大きく変革していく力となるだろう。大杉先生との議論で、久しぶりにワクワクする未来が見えてきた。