アーバン日誌
重度障害者用意思伝達装置を使ってみました
今日は午前中の「在宅医療 緩和ケアカンファレンス」の時間を使って、意思伝達装置のデモをしていただいた。
神経疾患などにより、発語や筆記が困難となった方とのコミュニケーションは、分からない、伝えられないが続くと、やがて家族も含めた周りの方がコミュニケーション自体を諦めてしまうことも少なくない。
僕が担当している神経難病の方も、この数年で徐々に意思伝達ができなくなり、ご家族からも「どうしたいのか、さっぱり判らなくて」とイライラしたり、本人が泣いている理由が分からず介護者も心を痛めたりすることが続いていた。1年以上前に意思伝達装置の導入を試みたが、その際はうまくいかず、「使えない」という理由で見送りとなった。
新しく担当した訪問看護師と作業療法士が関わる中で、家族からの介護負担や本人の苦痛に向き合い、「今の本人なら、まだ意思伝達装置を使えるのではないか」というアセスメントを立てて、福祉機器業者にデモを依頼。トライアルで本人がちゃんと文字を選んで言葉にしていく能力があることを確証してみせてくれた。
私も普段の診療の中で、本人に言葉をかけても反応が得られないことが多くなっていたので、これには驚いた。2人はさっそく重度障害者用意思伝達装置の申請を手続きし、昨日導入となった。
かつては五十音表の上をカーソルが動き、行と列を選んで一文字入力するスタイルだったが、今回のは使用者の瞳の動きを捉える視線入力により、文字の決定がよりスムーズに行えるようになっている。
実際にやってみると、視線ならではの難しさもあって、なかなかカーソルが思ったところにいかない。修正しようとしても、視線より顔を動かしてしまうので、結局誤入力してしまう。慣れが必要な感じだった。未だに50音表というのもその一因。スマホ時代になって大幅に進化した日本語入力がこうしたシステムにも活かされると良いが、やはりベースはWindowsPCなんだな。
文字入力もだけど、定型文や図を示すことで、伝えたいことや気持ちが表せられると、本人も家族や介護者もストレスが減るだろう。本人の能力を見極めて、粘り強く利用まで導いたふたりのスタッフに心から感謝したい。