在宅版肺炎治療クリニカルパス

取り組み 2022.03.31

2011年以降、肺炎は脳血管障害を上回り日本人の死亡原因の第3位になり、特に高齢者にとって肺炎は命取りになり得る病気です。在宅医療の現場でも、発熱の原因として最も多いのが“気管支炎・肺炎”で、その“肺炎”を在宅で治療できれば、入院に伴うせん妄やADLの低下などrelocation damageを防ぐことができます。

肺炎ケアパスチーム

五味 一英 医師・尾山 直子 看護師・
永田 美由紀 看護師・

プロジェクトの始まり

当院では複数の医師による訪問診療を行っているため、それまで診断・治療・家庭へのケアに関する指導について統一した方法はなく、各医師の裁量に任されていました。そこで、標準化した質の高い医療の提供や、訪問看護師を中心とした在宅療養スタッフとの円滑な連携、患者家族への教育ツールとしてクリニカルパスを活用できないかと考え、2014年『在宅版肺炎クリニカルパス』作成プロジェクトを立ち上げました!院内多職種カンファレンスで検討を重ねて、医師は今までの経験的な肺炎診断・治療を見直し、診断アルゴリズムと治療プロトコールを作成しました。

肺炎治療 クリニカルパスとは

喀痰吸引、肺理学療法や口腔ケアなどケア面での提案や家族向けの指導パンフレットの作成も行いました。薬剤の選定については看護師、薬剤師、理学療法士と協働して決定しました。点滴・ルート類、吸引器、指導パンフレットを揃えた“肺炎セット”をモジュール化して初動治療の迅速化を図るとともに、地域向けの勉強会を開催して、連携先の訪問看護師へパス運用についての説明と協力のお願いをすることで、肺炎を発症した在宅患者に対してクリニカルパスに基づいた治療とケアを実践しました。

  1. 診断
    当院では胸部X線が実施できないため、症状や身体所見から“肺炎”の診断を行う。
     
  2. 治療の場での確認
    肺炎治療を在宅で行うか、病院で行うかの希望を確認する。
    (軽症でも介護力の問題で入院加療を希望される場合、重症でも家での治療を希望される場合もある)
     
  3. 治療方法の選択
    重症度の判定を行い、抗菌薬の選択を行う。
     
  4. 治療の効果判定
    治療開始4日目に再評価を行い、以後の治療について決定する。

肺炎げきたいキットの中身

使用する物品を揃えておくことで、治療開始が迅速化。

肺炎治療クリニカルパス

医療者が扱う標準治療計画。他の事業所との連携もスムーズになる。

   

導入後、どんな効果があった?

肺炎パスの導入により、診断・治療法の統一化が図れ、訪問看護師との連携も円滑となり、迅速かつ継続的に医療が提供できるようになった。家族指導についてもパンフレットを使用し、適切なタイミングで抜けのない指導が可能となった。
2015年1月の肺炎クリニカルパス導入前後1年間の肺炎治療経過を後ろ向きに調査したところ、
在宅での治癒率が上昇し(69.0%→74.1%)、死亡率も減少した。(図〇)
発症からの初動治療が早いこと、点滴・吸痰など病院と変わらぬ処置が可能なこと、家族による密度の高いケアが出来ること、これまでの生活動作が継続されることなど、在宅療養の強みが治癒率の高さに繋がっていると考えられた。

肺炎クリニカルパスについて

在宅医療における肺炎治療は、初動治療が早いこと、点滴・吸痰など病院と変わらぬ処置が可能なこと、家族による密度の高いケアが出来ること、これまでの生活動作が継続されることから入院での治療に比べて治癒率が高いと言われています。また、“肺炎を自宅で診る”ことで、入院に伴うせん妄やADLの低下などrelocation damageの防止にもつながります。
このような背景から、標準化した質の高い医療のもとで“肺炎を自宅で診る”ために、訪問看護師を中心とした在宅療養スタッフとの円滑な連携、患者家族への教育をするためのツールとして『在宅版肺炎クリニカルパス』を開発しました。

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指導用パンフレット

ご利用にあたって

当ツールは当院で利用実績があり、効果も確認されていますが、実際に適用される場合には、事前に十分ご検討下さい。
無料で閲覧・ご利用いただくことができますが、当ツールの著作権は当院にありますので、転用あるいは商用のため利用される場合は申請いただきます様お願い致します。

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